コンセプト

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 コンセプトの柱は「ひと」である。屋台は結局「ひと」につきる。
 これまで人類は「便利さ」を追求し続けてきた結果、歪みが生じ、その代償として失われたものが「人間性」であり「コミュ二ケーション」であった。屋台は狭くて寒くて不便だが、肩が触れ合う狭さのお陰で人情味に溢れて気軽に話せるから「こころ」が温まる。
 不便さが生み出すコミュニケーションというものが存在するのが屋台なのだ。不便だからこそ相手を思いやるこころが生まれるのである。
 屋台の営業は店主の「人柄(キャラクター)」が左右する。マニュアル化は不可能だ。将来の目標を明確に持っている店主の商いには自然とファンや応援団がつくものだ。
 隣に座った見ず知らずの人とでも気軽に会話ができる場所は屋台をおいて外にはない。
 先人たちの知恵が凝縮しているのも屋台の特徴だ。大きさや形にも暖簾や柱にもそれぞれに意味がある。「効率化」するために先人たちが積み上げてきた知恵を無視すると痛いしっぺ返しが待っている。
 屋台の定義は「物を売る台に屋根を付けたもので組立や収納が容易であり移動が可能な店」である。屋台を名乗る以上はこの定義に近づけなくてはならない。組立収納をしない店は屋台ではないただの横丁だ。北の屋台は仮設性を大切にしていきたい。
 「まちは生活の場」である。綺麗で健全なだけでは面白味に欠ける。まちには猥雑さも必要な要素なのだ。
 十勝の住人は食料生産地に暮らしながら本当に美味しいものを食べていない。良いものは全て大消費地に送られている。北の屋台は農家の人達との結び付きが強いから自分の畑で採れた新鮮なものがその日の内に届けられる。さっきまで畑に生っていたものが不味い訳が無い。北の屋台は地産地消を実践している。
 屋台は商いの原点であり、最終目標ではない。屋台を起点にして商売を発展させてもらいたい。契約期間は3年間を一区切りとする。この3年間に、顧客を獲得し、ノウハウを習得し、客の嗜好をつかみ、資金を貯める。3年で屋台を卒業し、市内の空き店舗に移って独立し商売を大きくしてもらう、起業家の支援を目的の一つにしている。
 短期的には屋台の集合体が空き地を埋め、長期的には屋台の卒業生が空き店舗を埋める。北の屋台は二重の効果を狙った活性化策なのだ。

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